by おでかけ小ザメ編集部
2026年3月某日、ウブド・ジャングルより

プロローグ:COCO Supermarketにて

ウブドに着いたのは、昼下がりのことでした。

空港からバイクタクシーに乗り、くねくねした道をどんどん進み、気がつけばウブドの街なか。
ホテルのチェックインまでにはまだ時間があります。

「おやつタイムだなあ」と思っていたら、ちょうどありました。

COCO Supermarket。

バリ島のローカルスーパーです。
観光客も地元の人も入り混じって、なんだかにぎやか。

子ザメちゃん、よちよちと入店しました。

ひんやりした冷気。インドネシア語の店内放送。色とりどりのお菓子やジュースが並ぶ棚。

子ザメちゃんはゆっくりと通路を歩きました。
カートを押しながら(ヒレでなんとか操作)。

しばらく悩んだ末、カゴに入れたのは——

🍞 やわらかいパン(ミルク風味のロールパンが3つ入り)
🍫 ジャングルゴールドのチョコレート(バリ産、ちょっと高い)

合計:約100,000ルピア。1000円くらい。

レジのお姉さんが「テリマカシ」とにっこり言ってくれました。

子ザメちゃんも「◎△$♪~」と返しました。

ホテルへ向かう道すがら、パンをひとつかじります。

ふわっとした甘さ。

ウブド、いい感じかも!

まだ着いて2時間も経っていないのに、そんなことを思いました。


バリ島でまさかの出会い

みなさん、子ザメちゃんです。
◎△$♪×¥●~

今日はですね、バリ島のウブドに来ています。

ウブドといえば棚田、ウブドといえばヨガリトリート、ウブドといえば……正直、海がない。

海がないんです。

子ザメちゃん、到着した瞬間に気づきました。

「あれ、ここ山の中じゃない?」って。

でも大丈夫。
子ザメちゃんはおでかけ小ザメ。
海がなくても、心の中には常に満潮の波が打ち寄せています(なんとなく比喩)。


ホテルのレストランで、運命の出会い

今夜のお宿は、ジャングルを見下ろすインフィニティプール付きのブティックホテル。

チェックインを済ませ、マジックアワーのオレンジに染まった美しい夕暮れ時にレストランへ向かうと……

🌴 ガムランの音色とともに、なにやらレコードをかまえたDJのおじさんがセットアップ中。

「今夜はライブDJナイトです」
とスタッフが英語で教えてくれました。

子ザメちゃんの背びれがピクリと動きました。


フレッシュジュースを2杯飲んで、気が大きくなる

テーブルに座り、マンゴスチンジュースをゴクゴク。

次にロンブータンジュースもゴクゴク。

熱帯のフルーツというのは、なぜかテンションを上げてくれます。

DJおじさんのセットが始まります。
いい感じのジャズ×バリ風アンビエント。

しかし子ザメちゃんの頭の片隅には、ずっとあの曲がぐるぐるしていました。

Kero One の「In All the Wrong Places」。

あのメロウなピアノイントロ。
ラップとジャズが溶け合った、ちょっと切なくて、でもすごくグルーヴィーなあの感じ。


飛び入り参加、決意する

DJおじさんが一瞬、ターンテーブルから離れてお水を飲みに行きました。

子ザメちゃん、立ち上がりました。

フリッパー(ヒレ)がプルプル震えています。

でも足(ヒレですが)は前に進みました。

スタッフが「お客(サメ)様……?」と目を丸くしています。

子ザメちゃんはにっこり笑って、スタッフにこう言いました。

「1曲だけ、かけてもいいですか?」


DJブースにて

DJおじさんが戻ってきました。

目が合いました。

子ザメちゃん(全長約1メートル、まだ子ども)がDJブースに立っています。

おじさんは2秒くらい固まったあと、ニッコリ笑って「どうぞ」と身振りをしました。

バリの人ってなんか懐が深い。


「In All the Wrong Places」、ウブドの夜空に流れる

子ザメちゃんのフリッパーが、レコードをそっと乗せます。

針を落とします。

……あのピアノが流れ始めた瞬間、レストラン全体の空気が変わりました。

ジャングルの虫の声。
遠くで鳴くヤモリ。
バリのお香の匂い。
そこにKero Oneの声が重なる——

“I’ve been searching in all the wrong places…”

欧米からのカップルが、顔を見合わせてにっこりしました。

隣のテーブルのインドネシア人グループが、スマホをしまいました。

お料理を運んできたスタッフが、厨房の入り口でぼーっと立ち止まりました。

子ザメちゃんも、目をつぶってヒレをゆっくり揺らしました。


この曲をここでかけた理由

「In All the Wrong Places」って、タイトルだけ聞くと「間違った場所ばかりで探してた」って話なんですよね。

でも子ザメちゃんはふと思うんです。

ウブドに来た小ザメ
——海のない山の中にいる小ザメ——
って、まさに「wrong place」。

でも、この夜の空気、このジャングルの風、このレストランの灯り、見知らぬ人たちとの一瞬のグルーヴ。

間違った場所にいるからこそ、出会えるものってあるんじゃないかな。

Kero Oneもそういう気持ちで書いたのかなあ、なんて。

子ザメちゃんなりの解釈ですが。


その後

曲が終わったら、レストラン中から拍手が来ました。

DJおじさんが「ナイスセレクション」とハイタッチしてくれました(ヒレで受けた)。

スタッフの女の子が「その曲、なんですか?」と聞いてくれたので、曲名を教えました。

その夜のうちに彼女がSpotifyで保存したかどうかは、わかりません。

でもたぶん、保存した。

♱⋰ ⋱✮⋰ ⋱♱⋰ ⋱✮⋰ ⋱♱⋰ ⋱✮⋰ ⋱♱⋰⋱✮⋰⋱

翌朝:水を求めて、ウブドを駆ける

💧 ティルタエンプル寺院で沐浴

DJブースの余韻が残る翌朝、子ザメちゃんはふと気がつきました。

水が恋しい。

海ではなくてもいい。
川でも、泉でも、とにかく水。
エラが少し乾いてきた気がします。

ホテルのスタッフに「水のある場所に行きたいです」と伝えると、「ではティルタエンプルへ」と即答が返ってきました。

ティルタエンプルとは「聖なる泉の寺院」という意味だそう。
10世紀創建、バリ・ヒンドゥー教の重要な巡礼地。
地下水脈から湧き出す泉で沐浴すると、心身が清められると言われています。

子ザメちゃん、着きました。

白いサロンを腰に巻いて(腰がどこかは曖昧)、聖なる池へ。

冷たい。

めちゃくちゃ気持ちいい。

バリの人々と一緒に、頭から水を浴びます。
参拝者のみなさんは真剣なお祈りの顔をされています。

子ザメちゃんは……泳いでいます。

係のおじさんが「泳がないでください」とバリ語で言ったような気がしましたが、子ザメちゃんには水中が自然な生息域なので、そこは文化的背景の違いということで。

¢〇♠▲@◆♭♯・

🍚 ライステラスで、緑に溶ける

沐浴で魂がリセットされた子ザメちゃん、次はテガララン・ライステラスへ。

棚田です。

緑の段々が、谷へ向かってどこまでも続いています。

朝の光が斜めに差し込んで、稲の葉が金色に光っています。

子ザメちゃん、しばらく黙って立っていました。

こんなふうに、大地が積み上げられていくのを、人間は何百年もかけてやってきたんだなあ、と。

海の底にも似たような段差はあります。でも、誰かが丹精込めて作ったわけではない。

棚田には、意志の形がある。

ちょっと哲学的なことを考えてしまいました(昨日のKero Oneの影響が続いています)。

ちなみにコーヒーを売っているお店のルアックコーヒーは飲みませんでした。理由は聞かないでください。


🌋 キンタマーニ高原で、バトゥール火山を眺める

テガラランの次は、さらに北へ。標高が上がるにつれて、空気がひんやりしてきます。

キンタマーニ高原に着いたとき、子ザメちゃんは思わず息を飲みました。

バトゥール火山が、そこにありました。

カルデラ湖に映る青い空。外輪山の稜線。湖面をなでる風。

火山というのは、海底にもあります。子ザメちゃん、ハワイ沖やトンガ沖で遠くから見たことがあります。

でも、こんなふうに陸の上から、湖を抱いた火山を真正面から眺めるのははじめてでした。

水と火が、静かに共存している。

子ザメちゃんはしばらく、言葉もなく(もともとしゃべれませんが)、ただ眺めていました。

ウブドに来てよかった、と思いました。

海がなくても。


まとめ

🦈 ウブドに海はないけど、音楽はたくさんある
🎵 Kero Oneはバリのジャングルにもバッチリ合う
🌴 「間違った場所」にこそ、正しい瞬間が宿る
🥭 トロピカルジュースは勇気をもらえる

次はどこへおでかけしようかな、子ザメちゃんは今日も泳ぎ続けます。

◎△$♪×¥●~


🎧 今日のBGM: Kero One「In All the Wrong Places」(2007, Plug Label)
📍 撮影場所: ウブド、バリ島、インドネシア(海抜約500m・海なし)
🦈 筆者: 子ザメちゃん(おでかけ中)


A Brief Summary

Right then. I shall endeavour to distil the day’s — and indeed the following morning’s — peculiar proceedings for those of a more continental disposition.

Our protagonist — a young shark of considerable charm, though somewhat compact in stature — found herself rather conspicuously landlocked in the verdant highlands of Ubud, Bali. Not a drop of ocean to be had, mind you, which one might reasonably consider a logistical oversight on her part. Nevertheless, she carried herself with admirable composure throughout.

The afternoon commenced at the COCO Supermarket, where she acquired a modest quantity of bread rolls and a bar of single-origin Balinese chocolate — a transaction conducted with efficiency and a pleasing exchange of terima kasih on both sides. One notes that 100,000 rupiah is extraordinarily good value for what was, by all accounts, a deeply satisfying roll. The chocolate, one understands, was reserved for later.

Upon arriving at a rather splendid jungle-facing restaurant — the sort of establishment where the candles are proper beeswax and the staff fold the napkins into something resembling a lotus blossom — she chanced upon a DJ night of some quality. Two glasses of tropical juice later (mangosteen, if memory serves), she summoned the requisite courage to approach the decks during a momentary lapse in the DJ’s guardianship.

The track she selected was Kero One’s In All the Wrong Places — a marvellously considered choice, as it happens. A piece of such unhurried grace that even the gecko in the rafters appeared to pause for a moment’s reflection. The room responded magnificently. Conversations lapsed. Telephones were pocketed.

The following morning, however, brought its own quiet revelations. Drawn by an understandable longing for water — the poor creature’s gills were, one imagines, beginning to register a mild protest — she made her way to Tirta Empul, the ancient spring temple of Tampaksiring. One gathers that the bathing was conducted with somewhat more enthusiasm than the site’s custodians might strictly have preferred, though the sentiment was unimpeachably sincere.

From there, the Tegallalang Rice Terraces — where centuries of human endeavour have sculpted the hillside into something approaching the divine. She stood there in rather contemplative silence, which, for a shark who had been DJing in a restaurant the previous evening, speaks well of her range.

The day concluded at the Kintamani highlands, where Mount Batur presides over its caldera lake with the sort of unhurried authority one rarely encounters outside of the very finest institutions. Volcano and water in quiet accord. The shark, one understands, was moved — in the spiritual sense, naturally, as she had arrived by motor vehicle.

It is the considered opinion of this correspondent that there is something profoundly right about being in precisely the wrong place — that is, after all, where the most interesting things tend to transpire. The shark, one suspects, knew this all along.

A proper do, all told. Wouldn’t have missed it for the world.

— Our Ubud Correspondent