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【意外】カズオ・イシグロの長編小説「遠い山なみの光」は英国で書かれた

カズオ・イシグロ 長編小説 遠い山なみの光 英国 イギリス
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くむろぐをご覧いただきありがとうございます。

今回のブログは、カズオ・イシグロさんの小説「遠い山なみの光」についての記事です。
カテゴリー的にはKazuo Ishiguro、耳読書となります。

読書といえば、昔は紙の書籍で読むというのが当たり前でした。
今はそれに加えて電子書籍、耳で聴いて読書ができる(耳読書)Audibleのようなオーディオブックもあります。

オプションがたくさんあって、ホントいい時代に生きてますよね、私たち。
……あ、早速いってみましょう!

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遠い山なみの光とは

遠い山なみの光

これは、カズオ・イシグロさんのデビュー作となった長編小説です。
(1982年出版)

最新の近未来SF小説「クララとお日さま」でもすっかりお馴染みのカズオ・イシグロさん。
(Klara and the Sun by Kazuo Ishiguro)

映画化された小説「日の名残り」や「わたしを離さないで」でも広く知られ、私も尊敬してやまない一番好きな作家さんの一人です。

遠い山なみの光は、オリジナルタイトルが全く違います↓

原題:
A Pale View of Hills

☆日本語版と英語版を両方読むと、TOEICのスコアアップ間違いなし!

カズオ・イシグロさんは、正確には少し以前に短編作品でデビューしているけど、英国で王立文学協会賞を受賞した本作が世界的に認められています。

初期の作品は、前衛的な手法を用いた非現実的な内容で、あまり一般受けしなかったそうだけど、そんな小説も読んでみたいですよね!

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【Audible】耳読書でカズオ・イシグロを聴いてみよう↓

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あらすじ

故国を去り英国に住む悦子は、
娘の自殺という悲劇に直面し、喪失感の中で
自らの来し方(こしかた)に想いを馳せる。
戦後まもない長崎で、悦子は
佐知子とその娘、万里子に出会った。
あてにならぬ男に未来を託そうとする母親と、
不気味な幻影に怯(おび)える娘は、
悦子の不安をかきたてた。
だがあの頃は誰もが傷つき、それでも
何とか立ち上がろうと懸命だったのだ…

1945年8月9日。

たった一つの原子爆弾によって
無残に破壊された街、長崎。

「遠い山なみの光」は、
焼け野原から力強く復興していく長崎の街と、
困難な状況の中、淡く微かな光を求めて
生きる人たちの姿を端正に描いた小説です。

もともとは「女たちの遠い夏」
というタイトルで刊行されていて、
登場人物も女性がメインとなっています。
(あとは、ネコちゃんと
おっちゃんが出てくるよ)(ΦωΦ)

また、この作品には全体的に
独特なホラー感が漂っています。

特に第3章の「ある部屋」のシーンと
第10章の「川」のシーンは、怖すぎです。

このあたりのダークな情景の描き方が秀逸ですよね。

したがって、ホラー映画好きさんにも
おすすめできる本だと思いました。

実際にそんな場面を目の当たりにした
ことは無いはずなのに、頭の中に
はっきりとイメージできてしまう
という描写の妙。

なお私が一番好きな場面は、
悦子たちが稲佐山にお出かけする場面です。
(夜景スポットでも有名ですね)

それまで陰鬱な雰囲気がず~っと
続いてきたところへ、一転して
山上からの開放的なシーンへと
切り替わっていきます。

山の景色のイメージと清々しい空気感を
肌に感じられて、とても気持ちいいです。

人物描写もそうなんですが、繊細かつビビッドな風景描写がまたすばらしい。

淡々と描くのでなく、風景の美しさを
場面の登場人物に言わせる手法も好きです。

生き生きとした感じが肌に伝わってきますね。

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「遠い山なみの光」が書かれた場所

予備知識無しで読むと信じがたいんですが、
この作品は日本ではなく、英国(イギリス)で書かれました。

カズオ・イシグロさんが学生の頃に、当時下宿していた片田舎の屋根裏部屋で書き上げたそうです!

カズオ・イシグロさんが長崎に住んでいたのは5歳までで、それ以降はずっとイギリス在住です。

イギリスに引っ越し後の数年間は、日本の情報誌や教育の本、漫画などが長崎の祖父から届けられていたそうです。

インターネットも全く発展してない時代、それだけで、ここまでのリアリティを描き出すことができるなんて衝撃すぎる。……
凄すぎて言葉もありませんね。

カズオ・イシグロさんのご両親は日本人なので見た目は完全に日本人で、中身はほぼ完全に英国人だけど、日本人の心と日本の文化も持ち合わせているという、唯一無二の(unique)ハイブリッド作家さん!だからこそできる超絶技巧なんでしょうか。

蛇足ですが、イシグロさんがソーシャルワーカーをしていた頃に出会ったという奥さんは、スコットランド人だそうです。

もしいつの日かスコットランドに旅行できるとしたら、グラスゴーとアベラワーに行ってみたいなぁ。

作品のほっこりエピソードが満載の本はこちら

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【FYI】
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1945年8月9日に何が起こった?

「遠い山なみの光」は戦後まもなくの長崎が舞台なので、戦争と平和についてもまた深く考えさせられる本となっています。


1945年8月9日の未明。

ボックスカー(BOCKSCAR)という米軍の飛行機が、たった1個の悪魔の兵器「原子爆弾」を積んで、南太平洋のテニアン島を飛び立ちました。

米軍は当初、9時台に福岡の小倉市(北九州市)への原子爆弾の投下を目標としていました。

しかし雲や霞などによって視界が悪く、急きょ第二候補地の長崎市に予定が変更されました。

投下の場所が変わったことで時間も大幅に遅れ、11時2分に長崎に原子爆弾が投下されました。

この「ファットマン」と呼ばれた丸っこい大きなプルトニウム原爆は、3日前の朝に広島に落とされたウラン原爆「リトルボーイ」の1.5倍もの破壊力があったそうです。

長崎の地形と人口密度の関係でヒロシマより死傷者は少なくなったものの、あまりに悲惨で、筆舌に尽くしがたい出来事でした。

核兵器が二度と地球上で使われることのないよう、心から願います。

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カズオ・イシグロが描くパラダイムシフト後の光

この「遠い山なみの光」の根底にあるものは、世界を不条理とみるものです。

過去についても未来についてもどう考えていいか分からず、理想とは無縁のまま、薄暗い闇の中で手探りで動いている。

戦争が終わった直後などのパラダイムシフト(なんかめっちゃすごい変化)が起こった時、
混乱の中でも「不条理」という包み方だけに終わりません。

ディストピア(否定的に描かれた、絶望的な世界)の中でも、たとえ微かな光でも希望を捨てない!

そのような生き方が描かれています。

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まとめ

「希望」は煌めく光でなくてもいい。

ただ、

「志」は常に

大きく、気高く持っていたい。

たとえ微かな希望でも

高尚な志があれば、

この先に待ち受けるどんな困難も、

きっと乗り越えていける!

そう信じています。

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最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事があなたのお役に立ちましたら幸いです!
ではノシ